近年、働き方の多様化や終身雇用制度の終焉などといった理由などから、会社に務めているオフィスワーカーから独立開業を行い自分でビジネスを立ち上げようというムーヴメントが起きているようです。
そうした流れの中で軽貨物運送事業の立ち上げが注目を集めていますが、ネットでの書き込みなどを見ていると、引っ越し業と混同されている節があります。
軽貨物業と引っ越し業の違い
確かに、軽貨物事業と引っ越し業というのは両方運送用の車を使いますから、同じものと考えてしまうのも無理はありません。
しかし、おおまかな点では似ているところが複数あったとしても、細かいところではさまざまな違いがあります。この項目でその差異をお知りになれば、軽貨物と引っ越し業務が別物だとはっきりご理解いただけるでしょう。
・・主な業務が異なる
まず、軽貨物運送業と引っ越し業がもっとも異なる点は、その業務です。軽貨物の場合、従事することとなるのは商品や物の輸送配送であり、その一環として引っ越しの際新居へ移動しなければならない家具や電気製品などを運ぶといったことがありますが、その他にも企業からの依頼を受け、関連するものを輸送するといったことも業務のひとつです。
それに対し、引っ越し業というのはあくまでも「引っ越し」が主な業務となります。商品や部品、贈り物の配送というのは引っ越し業が本来主な業務としているものとはいいづらいです。
・・メインとなる顧客層が異なる
軽貨物運送事業と引っ越し業では、ターゲットとする顧客も異なっています。軽貨物運送業の場合、主に契約を行って仕事をするのは企業です。この場合、事業者対事業者同士の契約となるため、軽貨物業務は基本的に「BtoB」の契約ということができます。
これに対し、引っ越し業はその業務の性格上、一般家庭や団体が主なターゲットとなります。大手の引っ越し会社がテレビコマーシャルを頻繁に行っているのも、一般家庭をマーケティングの対象としているからです。
もちろん、軽貨物業者によっては個人から大口案件を受注することもありますし、企業の引っ越しを引っ越し業者が請け負うきともありますが、基本的にはそのようになっています。
・・料金の計算の仕方が違う
また、細かい点では、どのような形で料金を請求するのかという点も異なります。軽貨物業者の場合、料金の計算は主に「荷物の個数」や「重さ」で決定します。つまり、1台のトラックにたくさん荷物を積んで運んでもらうとなれば、その量に応じて料金が請求されるのです。
それに対して、引っ越し業者は「どれだけのトラックを動員したか」で料金を決める場合がポピュラーです。この場合、1台のトラックにどれだけ荷物を積んでも料金に変化はありませんが、トラックの台数が2台に変化すれば料金は増加することとなります。
・・携わるスタッフの数が異なる
見落としがちな点では、ひとつの業務に携わるスタッフの数も異なっています。軽貨物運送、とくに小規模な業者の場合は1人で運送から積み降ろしまで行うことも多いです。
それに対して、引っ越し業者は複数人を1チームとして業務をおこなうことが主になっています。トラックに積載するものが多く、なおかつ重量のある家電やインテリアを慎重に運ぶ必要があるからです。
・・その他異なる点
その他にも、異なる点としてはいろいろなものがあります。これは自分が依頼する側に立った場合のことですが、荷物対する扱い方がかなり異なります。軽貨物業はあくまで輸送が中心業務となるため、運び入れをどうするかという点に関しては依頼主の判断と行動に任せている場合が多いです。それに対して引っ越し業では「引っ越し」それ自体が業務となるため、家の中や部屋の中まで自分たちで運び入れを行うのが当然という見方があります。
また、非常に細かい点ではありますが、引っ越し業者は国土交通省からの認可を受けなければ運送業として営業活動を行うことができないのに対し、軽貨物業者は引っ越しのための荷物運送の依頼を請け負うことができます。
それに対して共通しているのは、どこから認可を受けるかという点です。軽貨物運送業、そして引っ越し業者ともに各都道府県の運輸支局で手届け出続きを行い、国土交通省から認可を受けとります。
独立開業には軽貨物の方が有利と考えられる理由
軽貨物運送業と引っ越し業の違いは多々ありますが、独立開業を考えているオフィスワーカーの目線に立って考えた場合、軽貨物の方がいいと考えられます。その理由はさまざまですが、この項目にて解説を行っていきましょう。
・・1人からでもはじめられる
軽貨物独立業者が引っ越し業者と異なる点はスタッフが複数いるかいないかだと解説を行いました。実際引っ越し業務に携わる場合、一人で行うにはかなり大変ですので、どうしてもスタッフを複数雇う必要があります。そうなると人件費的にも人材管理的にも大きな手間でしょう。
その点軽貨物業者の場合、一人からでも開業を行うことができますし、業務自体も一人で過不足なく十分にこなすことができます。だから、引っ越し業と比べてオフィスワーカーの独立開業に向いているのです。
・・少ない元手で開業できる
もし、仮に引っ越し業で独立開業を行おうと考えた場合、かなりの元手が必要となってきます。たくさんの荷物を入れるための大型トラックが複数必要になりますし、ダンボールや衝撃吸収材といった小物もたくさん準備しておかなければなりません。トラックを管理しておくための大型駐車場も確保する必要があります。資金の少ないオフィスワーカーにとって、開業資金が多大になるというのは手痛い問題でしょう。
それに引き換え、軽貨物の場合は軽トラック一台と営業所、そして車庫があれば開業および業務をこなすことが可能です。加えて場合にもよりますが、軽トラックは自家用車、車庫や営業所はガレージや自宅で代用することもできますので、引っ越し業と比べるとかなり出費を抑えられます。
・・間口が広く、需要も大きい
軽貨物のよいところは、なんといっても請けられる業務の間口が広いということです。引っ越し業の場合、先述した通り運送業に関する営業活動は事前に申請を行わなければしてはいけないことになっています。そういったことを考えると、少々潰しがきかないとも思えるかもしれません。
しかし、軽貨物の場合は商品の運送だけではなく、引っ越しのための輸送にも携わることが可能です。それに加えて引っ越しと比べると高い発注数が見込めます。この点に関しては、「日本全体で一日に行われる引っ越しの数」と「日本全体で運送のやりとりが行われている数」のどちらが多いかを考えれば、おのずと実感ができるでしょう。
・・将来性が高い
また、軽貨物がもっとも優れているポイントは、その将来性の高さです。インターネット技術の発達によってネットショップを介した通販が頻繁に行われるようになり、サプリメントや化粧品の定期サービスなど、軽貨物が活躍する場はどんどん広がっています。
こうした事情を考慮すれば、今後軽貨物へのニーズはさらに高まることが予測できるでしょう。そうした将来性の高さを考えれば、軽貨物を独立開業の手段として選ぶのはよい選択と言えるでしょう。
軽貨物で独立開業するなら、軽貨物のことをよく知ろう
軽貨物というのは多くの方にとって注目されやすい事業ではないため、引っ越し業との混同など勘違いされることも多々あります。せっかく独立開業を検討されるなら、軽貨物についてしっかりリサーチを行い、そのメリットを把握したうえで取り組んでいきたいものです。