サラリーマンから自分で事業を起こし独立開業を行おうとする場合、軽貨物をはじめとする運送事業というのはよい選択のひとつだとされています。とくに軽貨物は特別な資格免許が必要なく、さまざまな工夫によって開業資金を安く抑えるということができるため、リスクが少ないのです。
しかし、軽貨物ならび運送業に着手するなら、どうせならばそれらに関するいろいろなことを知っておいた方がよいでしょう。たとえば、運送業における走行距離に関する事柄です。
もくじ
一般的な大型運送ドライバーの平均走行距離は?
いったい運送業というのは1日にどのぐらい走るのかということに関して、ふと疑問に思われたことはないでしょうか。運送業に着手されるのであれば、こうした事柄はぜひとも知っておくべきです。
・大型車両配送は1日300キロメートルを超える
今回走行距離をリサーチするため、2015年に国土交通省が実施した「トラック輸送状況の実態調査(全体版)」を閲覧してみたところ、一般的に配送業に用いられる大型トラックでの1運行(始業時間から終業時間まで)の走行距離は、347キロメートルとなっています。
また、運送車両においてもっとも巨大となるトレーラーの走行距離は意外にもこれより少なく、280キロメートルとなっています。
300キロメートルってどのくらい?
ここで重要なのは、300キロメートルがどのぐらいの距離なのかということです。実感を持っていただくため、東京から300キロメートル進めばどこまで行けるかということを計算してみたところ、西側へ行けば愛知県周辺、北側であれば新潟県周辺、東側であれば宮城県へとたどり着くこととなります。
旅行や通勤といった一般的な目的の自動車利用でここまでの距離を移動する機会というのはそれほどないでしょう。せいぜいゴールデンウィークなどの長期休暇における家族旅行ぐらいです。しかし、運送業をはじめるとなった場合は、毎日これだけの走行距離を走るということになります。
配送業において必要となるガソリン代はどのぐらい?
走行距離という要素はさまざまなことに影響を及ぼしますが、その中でも金銭的に大きく響いてくるのがガソリン代です。当然、走行距離が長くなれば長くなるほど、ガソリン代は高くなります。
1日の走行距離300キロメートルという前提に加え、ガソリン単価が140円、燃費がリットルあたり10キロメートルほどであったとして計算を行うと、1日に発生するガソリン代は4.200円となります。これを月額に換算すると10万円前後の出費となり、かなりの負担と言えます。経済状況の変化によってガソリン代が高騰すれば、出費はさらにかさむでしょう。
軽貨物ドライバーの一般的な平均走行距離は?
一般的な配送業のドライバーにとって走行距離というのはかなりの数字となり、費用面の負担につながるということがわかりました。
それでは、軽バンや軽トラックを用いて行うことのできる軽貨物業においてはどうでしょうか。この項目にて見ていきたいと思います。
・軽貨物配送車の走行距離は200キロメートルを下回る
先ほどの国土交通省のリサーチ資料を元に軽貨物業者の走行距離を調べてみたところ、全体的に一般的な配送業者のそれより長いということがわかりました。
軽貨物事業において用いられる種類の貨物自動車(普通自動車免許で運転が可能なもの)の1運行での走行距離は172キロメートルとなっており、大型貨物車のそれを大きく下回ります。また、少し規模の大きい中型貨物車両の走行距離はそれよりわずかに多いものの、やはり300キロメートルを下回る227キロメートルとなっていました。これらのことから、軽貨物業者は一般的な配送業者よりも多くの距離を走らないということがおわかりになるでしょう。
・長距離輸送が少なく、最大走行距離も短い
もうひとつ注目すべき点は、大型貨物車両の長距離案件(500キロメートル超え)が実に21%もあるのに対し、軽貨物の場合はわずか3%にすぎないということです。
長距離案件の割合が多ければ多いほど平均走行距離が伸びるだけでなく、予測される最大走行距離の値が増加します。すなわち、大型貨物自動車案件の平均である300キロメートルを超える案件が少なからず存在するということです。この考えで行けば、軽貨物の場合はその平均である172キロメートルを大きく上回るような走行距離が求められる案件は非常に少ないと言うことができます。
運送業における走行距離が少ないことのメリットとは?
こうした走行距離の長短に注目する人というのはそれほどいません。しかし、この値が少ないということは、実はさまざまなメリットがあります。もっとストレートに言うなれば、軽貨物事業を開業するということには以下にあげるような利点があるということです。
・案件に要する時間が少ない
全体的な走行距離が少ないということは、それだけ仕事に費やす時間が少ないということでもあります。走行距離が長いということは長時間トラックに乗っているということであり、その分仕事に拘束されるということです。
すなわち、走行距離の短い軽貨物であれば、一般的な貨物業者と比べて仕事に費やす時間が少なく、プライベートを確保できる可能性が大きいということとなります。
・体力を温存することができる
また、走行距離が長いということは、それだけ運転に対して集中力を使うということでもあります。集中力を費やすというのは意外と体力を使うものであり、ましてやトラックの運転のように長時間集中し続けると、決して小さくない疲労感を覚えるでしょう。
しかし、走行距離さえ短く抑えることができれば、その分集中せずに済み、体力の消耗を最小限に抑えることができます。だから、「仕事が終われば疲労困憊で何もすることができない」といったような状態をなるべく防げるでしょう。
・ガソリン代を節約することができる
また、走行距離が短いというのはドライバーの精神や肉体だけではなく、金銭的なメリットももたらしてくれます。走行距離が短いということは、それだけガソリンの消費を抑えることができる、すなわち給油の機会を減らせるということです。
この前の項目でも解説しましたが、ガソリン代というのは運送業者にとってもっとも大きな割合を占める維持費となります。それをなるべく減らせるというのはとても大きなメリットだと言えるでしょう。
・一日にたくさんの案件を受注することができる
また、走行距離が短い、仕事にかける時間が少ないということは、それだけ余裕があるということです。ここで先ほどの国土交通省のデータを見てみると、大型貨物の一日の集配箇所数が3.4箇所となっているのに対し、軽貨物の方は5.7箇所と決して小さくない差がついています。
すなわち、軽貨物の方が走行距離は短い分、よりたくさんの集配箇所を巡っており、より多くの案件を一日に受注しているということがわかります。
いろいろなリサーチを行ったうえで軽貨物開業を検討しよう
このような観点から見ても分かる通り、軽貨物業者というのは走行距離の点から見ても物理的・金銭的な負担が少なく、資金的な余裕のない方でも運営がしやすいと言えます。
こうしたさまざまな利点を考慮したうえで、軽貨物の独立開業を検討してみましょう。