自分で軽貨物業者として事業を起こす、あるいは特定の企業と業務委託契約を交わす場合、その方法やチェックすべきポイントは運送会社の社員として働く場合と比較し、かなり大きく変わってきます。業務委託でしか得られないメリットや注意点も決して少なくはないのです。
そして非常に重要になってくるのは「持ち込みドライバー」という要素です。これはとくに業務委託で軽貨物事業を運営しようということになった場合大きく関わってくるものごとであり、この要素にどれだけ気を配るかで、事業の今後も大きく変わってくる可能性があります。
持ち込みドライバーの定義とは
はじめて軽貨物事業にチャレンジしようと考えている方は、この持ち込みドライバーということば自体をあまりよく知らないかもしれません。ですので、この項目でまずは持ち込みドライバーについて具体的に解説を行っていきましょう。
事業に自分で用意した車を持ち込む
持ち込みドライバーとは一体何かということについて簡単に説明すると「自分の車を事業に使用する」ということです。もう少し具体的に説明をするならば、軽貨物事業をはじめるにあたって自分で事業用の車を用意し、それを事業に持ち込むことによって事業をこなしていくということとなります。
わかりやすい例が、一時期流行しいわゆる「デコトラ」です。デコトラのほとんどは車の所有者兼事業者によって安全の範囲内でカスタマイズが施されており、車自体は「持ち込まれた車」、それを操作する運転者は「持ち込みドライバー」ということになります。
業務委託と持ち込みドライバーの深い関係
この持ち込みドライバーという概念は、軽貨物事業の業務委託契約と密接につながっています。たとえばただ単に運送会社の社員として雇用された場合、事業用の車は会社側が用意してくれるため、社員は自分で車を用意する必要がありません。
しかし、業務委託契約の場合、一部の例外を除き企業側は事業者のために車を用意してくれることはありません。事業者は雇われているわけではないため、企業側にそこまでフォローを行う必要性はないからです。よって、業務委託契約を行った事業者が自分で自分のための車を用意しなければならないということとなります。
業務委託契約の形で軽貨物事業に着手するのであれば、この持ち込みドライバーの概念はぜひ把握しておきたいところです。
業務委託における持ち込みドライバーの有利性
一見手間がかかるように思える持ち込みドライバーの要素ですが、そういったネガティブな側面だけではありません。むしろ、事業者の工夫次第によってはさまざまなメリットを享受できる可能性も大きいのです。
自分で選んだ車を事業に使用できる
持ち込みドライバーは自分で自分の車を選ぶ必要があります。それは逆に言うなれば、「ざる程度の範囲内においては仕事で使う車を自由に選んでもよい」ということなのです。
今まで少しでも車を使う仕事を経験された方の中には「社用車が古くて運転しづらい」や「デザインが気に入らない」といったような不満を感じられたことがないでしょうか。被雇用者である社員の場合は我慢せざるを得ないこともありましたが、事業者ともなればそうした不満を感じづらくなります。
常識の範囲内であれば、機能が満載の新車であろうとコストパフォーマンスに優れた普及者であろうと自分の好きなままにセレクトでき、事業に使用することができるのです。
ある程度好きなようにカスタマイズ可能
また、持ち込みドライバーの車は自身の所有者であるため、カスタマイズも行うことができます。先述したデコトラの例は少々極端ではありますが、運転や事業に支障をきたさない範囲であれば、自身が望むカスタマイズができるというのも魅力なのです。
たとえばカーナビやドライブレコーダーを最新のものにしたり、性能の高いオーディオ機器を備えつけるなどすれば、より快適に軽貨物事業を行えるでしょう。
社員よりも大きな報酬が期待できる
業務委託による持ち込みドライバーの場合、企業側は事業に用いられる車のメンテナンスなどの経費負担を行う必要がなく、ほとんどの場合それらは事業者任せということとなります。一見これはデメリットのように思えますが、その分事業者には社員よりも高い報酬が支払われるため、むしろメリットとも言える場合もあります。
やり方によっては諸経費を安く抑え、最大限の利益を上げることも可能です。
仕事に対する熱意が向上する
「自分の車で仕事をする」ということは、それだけ自立して仕事を行うということです。よって、人によっては社員のそれよりも高いモチベーションを維持することができます。
苦しい状況であったとしても、「自分の車で仕事をしている」という事実からくる熱意が、事業者を支えてくれるでしょう。
業務委託での持ち込みドライバーの注意点
さまざまなメリットの一方で、持ち込みドライバーで事業を行うにあたっては注意しておきたいポイントもいくつかあります。これらを理解したうえで、事業への参入を検討してみるとよいでしょう。
企業によっては車を自由に選べない
先ほど、持ち込みドライバーは事業用の車を自由に選べるといったことについて解説を行いましたが、業務委託を受け付けているすべての企業がそれを許可しているというわけではありません。企業によっては「この車でなければならない」といった厳しい決まりが課されている場合もありますし、事業用の車が提供されるためにそもそも持ち込みを行えないといった場合も予想されます。
また、これはほとんどの持ち込みドライバーに言えることですが、たとえば異常な速度で走行できるようにしたり、社会通念や企業イメージに反するデコレーションを施したりするなど、常識の範囲から逸脱したカスタマイズは契約解消などのトラブルの原因となりますので、どのような企業と契約を行うにしてもそういった点はわきまえておきましょう。
自由である分責任も大きくなる
自分で車を持ち込んで仕事をするということは、言い換えるならば「その車が原因でうまく仕事がこなせなかったとしてもそれは自身の責任である」ということです。たとえば、車の積載量が小さく積み込みが行えなかった、あるいは耐衝撃への備えが不十分で荷物が破損してしまったとしても、それはあえてその車を選んだ持ち込みドライバーの責任であり、失敗の言い訳にはなりません。
そのため、車を持ち込むにあたってはデザイン性や機能性のみならず、本当にその車で軽貨物事業を正しく進められるかといったことについても考慮したうえで選ぶ必要があるのです。
快適で利益性の高い仕事が行える
車の選択やカスタマイズなど、いくつかの注意点を考慮さえしておけば、持ち込みドライバーという要素は基本的に事業者にとって有利に働くものです。常識やルールを逸脱しない範囲でうまく有効活用すれば、利益率をさらに高め、なおかつストレスを蓄積させない事業者好みの仕事が行えるようになります。
軽貨物での独立開業をサポートする会社の中には、車の持ち込みを含めさまざまな点をフォローしてくれるところも存在していますので、よく比較検討したうえで選ぶようにしましょう。