軽貨物運送業での独立開業は、低コストで始められるビジネスとして注目されています。しかし、成功するためには準備が欠かせません。本記事では、開業に必要な手続きや許可申請の流れ、そして、資金計画のポイントについて詳しく解説します。これから独立を目指す人の参考になれば幸いです。
軽貨物運送で独立開業するメリット
軽貨物運送業での独立開業は、ほかの運送業と比べて非常に魅力的なメリットがいくつかあります。以下で詳しく解説します。
開業が簡単ですぐに営業を始められる
まず、軽貨物運送業は届出制であるため、必要な書類に不備がなければ、申請したその日からすぐに営業を開始することが可能です。特別な免許や資格を取得する必要もなく、普通自動車免許があれば運転できるため、手続きに時間や費用がかかることはありません。
これはほかの運送業と比較して大きなメリットであり、ビジネスを素早くスタートしたい人にとって非常に有利でしょう。
開業資金が少なくて済む
軽貨物運送業は開業資金が少なくて済むという点も大きな魅力です。必要なのは、軽貨物車両1台とその駐車場の確保だけです。大型トラックや特殊な設備を必要としないため、車両購入費や維持費も抑えられ、資金面でのハードルが低いのです。
たとえば、大型トラックを用いる運送業では、車両そのものが高額であることに加え、免許取得や車両保険のコストも高くなる傾向がありますが、軽貨物運送ではこうした負担が少なくなります。
柔軟な働き方ができる
軽貨物運送業はフリーランスや副業としても始めやすく、個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができるのもメリットです。固定費が少ない分、仕事量に応じて収入を調整でき、リスクを抑えつつ安定的な収入を目指せます。
ビジネスの立ち上げにあたって高額な初期投資を必要としないため、経営の安定度も比較的高く、初心者でも安心して参入できる市場です。
軽貨物運送の開業に必要な手続きとは
軽貨物運送業を開業するためには、いくつかの手続きを行う必要があります。以下は、具体的な開業手順と必要な手続きについて詳しく解説します。
軽貨物車両と駐車場の準備
まず、軽貨物運送業を始めるためには、軽貨物車両と駐車場の準備が必要です。軽貨物車両とは、軽トラック、軽バン、125㏄以上のバイクなどのことで、自分で所有するだけでなく、リースした車両を使用することも可能です。
リースを利用すれば、初期投資を抑えつつ車両を確保できます。メンテナンス費用も月々のリース料に含まれる場合が多いため、経営の安定化につながります。車両が準備できたら、駐車場も確保しましょう。駐車場は自宅の敷地でも問題ありませんが、事業専用のスペースが確保されていることが求められます。
具体的には、貨物自動車運送事業法や国土交通省の通達・告示にもとづいて、駐車場などは営業所から一定の距離内に設置する必要がありますが、その距離は地域によって異なるので注意が必要です。
運輸支局へ開業を届け出る
次に、運輸支局へ開業を届け出る必要があります。この手続きは、軽貨物運送業を合法的に運営するための重要なステップです。具体的には貨物軽自動車運送事業経営届出書、事業用自動車等連絡書、運賃料金設定届出書などの必要書類を運輸支局に提出します。
届出書はどれも運輸支局の窓口で直接、もしくはWebサイトからダウンロードして入手できます。また、軽貨物車両の車検証のコピーも必要です。これらの書類を準備し、運輸支局での届出を完了させることで、軽貨物運送業の開業にまた一歩近づきます。
黒ナンバーの取得
届け出が完了すると、次に必要なのが黒ナンバーの取得です。黒ナンバーは、軽貨物運送業で事業用車両として使用する際に必須のナンバープレートです。運輸支局での手続きが完了すると、事業用自動車等連絡書が交付されます。
この連絡書と車検証のコピー、現在使用している黄色ナンバーのプレートをもって軽自動車検査協会に提出し、黒ナンバーに切り替えましょう。黒ナンバーを取得することで、正式に事業用車両として軽貨物車両を運行することが可能となります。
保険への加入も忘れてはならない
軽貨物運送業では、法定の自賠責保険だけでなく、任意保険への加入も強く推奨されています。自賠責保険は最低限の補償しかカバーしておらず、事故や損害賠償に対して十分な補償を提供しないため、任意保険に加入することで、万が一のリスクに備えることが重要です。事業に必要な補償範囲を確認し、最適な保険プランを選択しましょう。
開業届を税務署に提出
最後に、開業届を税務署に提出します。軽貨物車両と駐車場の準備、運輸支局と軽自動車検査協会への届け出が済み、保険の加入が完了したら、いよいよ開業届を提出する段階です。
開業届は、開業日から1か月以内に所轄の税務署に提出する必要があります。これを提出することで、青色申告による節税効果が期待でき、事業の収益を最大限に活用することが可能になります。
軽貨物運送の開業に必要な費用について
軽貨物運送業の開業にはさまざまな費用がかかります。以下は、具体的な費用の内訳について詳しく説明します。
車両代
もっとも大きな費用となるのが、車両代です。運送に使用する軽トラックや軽バンを購入する必要があります。中古車両であれば数十万円から購入可能ですが、新車を選ぶ場合は100万円以上の費用がかかることもあります。
なお、すでに適した車両をもっている場合、この費用はかかりません。また、車両をリースする場合は、購入に比べて初期費用を抑えられますが、月ごとのリース代が発生します。
税金
次に、車両を保有することで発生する税金も考慮しなければなりません。軽貨物車両には毎年課税される軽自動車税(種別割)、購入時にかかる軽自動車税(環境性能割)、そして、車両の新規登録時や車検時に支払う自動車重量税の3種類があります。
これらの税金は、車両の所有状況や年度によって変動しますが、毎年の運営費用に含めて計算しておくべきです。また、リース車両の場合は、リース会社が税金相当額を負担するため、月々のリース費用にこれらの税金が含まれる形になります。
車検費用
車両を維持するためには、車検費用も必要です。車検には、法定費用と車検基本料(点検整備料や部品交換料)があります。法定費用には自賠責保険料、自動車重量税、運輸支局に支払う検査手数料(印紙代)などが含まれます。
黒ナンバーの取得
軽貨物運送業を始める際に必要な手続きの一環として、黒ナンバーの取得費用も考慮する必要があります。自分で申請を行った場合、ナンバープレート代として約2,000円程度がかかります。
保険料
法定の自賠責保険は24か月で約2万5,000円ですが、事業用車両としてのリスクを考えると任意保険への加入が強く推奨されます。任意保険の保険料は自家用車の2〜3倍程度高くなる傾向があり、毎月の保険料は1万円以上かかる場合が多いです。保険料は保険会社やプランによって異なるため、複数のプランを比較して選びましょう。
駐車場代やガソリン代
駐車場代やガソリン代も運営費用として計上する必要があります。駐車場代は地域によって異なり、都心部では高額になることが多いです。郊外では比較的安価に借りられますが、利便性も考慮しなければなりません。ガソリン代は車両の燃費や走行距離、稼働時間によって変動しますが、燃費のよい車両を選ぶことで経費の節約が可能です。
まとめ
軽貨物運送業は、ほかの運送業に比べて手続きが簡単で、少ない資金で始められる魅力的なビジネスです。普通自動車免許のみで開業可能で、手続きも比較的スムーズに進められます。必要な初期費用は車両代や税金、保険料、駐車場代などですが、リースを活用することで初期投資を抑えることも可能です。こうした利点を活かして、軽貨物運送業での独立開業に挑戦し、安定した収益を目指していきましょう。